本日 35 人 - 昨日 104 人 - 累計 332495 人

2021演奏者紹介

  1. HOME >
  2. 2021演奏者紹介
指揮者・トップからの一言
(*敬称略)

1部指揮:小穴雄一
いよいよ5回目です。しかし、静一展はカウントしません。一回、一回一期一会の集まりです。静一さんの曲を演奏したい、それだけなんですね。その心意気で分け隔てなく集まったみなさんで静一ワールドを旅します。今回も大勢の方にご参画いただき、ほんとうに素晴らしいことだと思います。

旅は道連れ、そう、静一さんが山をこよなく愛し、旅がお好きだった、その足跡を辿りながら ご一緒に探訪いたしましょう。

1部1曲目はめったに演奏されない「スペイン第三組曲」。ぼくは、静一さんの作品は学生時代はほとんど演奏する機会がなかったので、常に新鮮な気持ちで楽譜に対峙させていただいています。しかし、この作品、どうして、なかなか奥深く、しみじみとしていて、それでいて明らかに静一さんが傾倒されていたフランス印象派の影響が色濃く刻まれていることがわかります。ほの暗いなかにも、どこからか光が差し込んでくるような作品です。そしてこの作品ではどこか鐘がモチーフにもなっているように思います。さぁ、みなさんとスコアを手がかりに、この素敵な作品を紐解いてまいりましょう!どうぞよろしくお願いします。


スコアに記されている静一さんのコメントを付記いたします。(いつものことですが、これを読んだだけでわくわくします!)

1. ヒターノ(Gitano)

黒い頭髪、褐色の皮膚ー
そして黒い眸(ひとみ)には
排他と親しさが雑居するヒターノ(ジプシー)には
厳しい掟や 古い因習(ならわし)が多い
けれど根深い因習とは別に
気が向けば時、処を選ばず
奔放に歌い 踊る 陽気な一面もある
しかし、その時が過ぎれば
すぐ どうしようもない暗さが
身辺に漂う ヒターノー

2. 夜想曲(Nocturno)

重々しい 夜の寺院に
思い出したよう 鐘が鳴る
回廊のアーチに 遠い昔
ムーア人が 残していった 赤と白の
ダンダラ模様の描き出す アラベスク
気づくと 潮さいのような街のどよめき
その中に 微かなカスタネットや
キタルラの響きがある
そして、奏でる民族楽にも
かくしきれないムーアの体臭が
滲みだしている
(コルトバ メスキータ聖堂にて)

3. 春の祭(Fiesta dell Primavera)

何かにつけて集まって騒ぐことの好きな
スペインには祭りが多い
街はずれの 大げさな春の祭りには
巨大な花車や華麗な花飾り
民族色豊かな
晴れ衣装の行列
夜は夜で花火が夜空を色どり
聖堂には 数えきれない灯が捧げられ
カテドラルの鐘も
「今日は別だそ!」と
高く鳴りひびく
(セビリアとバレンシアの祭より)


2曲は「人魚」。この作品はお馴染みの方も多いのではないでしょうか?静一さんの人気演目のひとつかもしれません。いままで「比羅夫ユーカラ」や「氷姫に魅せられたルディ」で素敵な歌声を聴かせていただいた手島由起子さんに今回も快く共演いただけることになりました。ナレーションもルディにご登板いただいた新澤泉さんから二つ返事でご承諾いただきました!嬉しいですね!

数年前京都の石村隆行さんをお訪ねした際に「こんな楽譜がありますよ」と言って手渡された楽譜がなんと人魚の原本でした。(石村さんも静一さん大好きなようです!)それは鉛筆書きの実筆の楽譜でした。他界された松本譲さんの資料を引き取られた際にまぎれていたとのことでした。欲しい、なんとしてでも欲しい!そう心に誓い、後ほどお願いしたところ、快くコピーを分けていただきました。いまその楽譜が手元にあります。今回はこのバージョンで取り組んでみようと思います。台詞の挿入箇所も細かく指示がなされています。この作品はおそらく子供に聴かせるために作られたのではないかと想像します。まるで子供に絵本を読み聴かせるかのような作品。そういう気持ちで演奏してみたいと思います。(どこかの保育園か小学校でお座敷ができたらいいですね!子供たちを招待するというのはいかがでしょう?)初稿は大正15年5月、マンドリンの作品としては「山の印象」につぐ2作目とのことです。初版は東京プレクトラムソサエティのために捧げられました。その後昭和41年5月に他界された小池正夫さんが指揮されていた竹内マンドリンアンサンブルの依頼で増補されたバージョンが初演されました。そのタイトルには「アンデルセン童話によるマンドリンオーケストラと物語 劇的組曲 ”人魚” 」とありますので、今回石村さんから分けていただいた楽譜のそれと一致します。楽曲は「前奏曲」「暮れる海」「水夫の踊り」「嵐の海」「人魚と魔女」「人魚と王子」「海の囁き」「酒宴」「終曲」から成っています。

みなさんとご一緒にメルヘンファンタジーの世界を繰り広げてまいしましょう!

今回も、よろしくお願いします!

小穴 雄一

2部指揮:髙草木典喜
新しい元号は「令和」であります。
この発表を見た瞬間、脳裏にイメージとして浮かんだのは、和宮親子内親王でした。
宮家の令嬢が齢十六にして武家の令室に。日本国に和をもたらすことを心に誓い・・・。
令和最初の鈴木静一個展演奏会で、「維新の陰に」を演奏できることを個人的にはとても嬉しく思っております。
この個展演奏会は今回で5回めを数えますが、私も第2回以降参加させていただいております。敬愛する鈴木静一の楽曲を今までにも少なからず演奏して参りましたが、多くの方が最高作であると評する「失われた都」という曲とはすれ違ってばかりで、今まで指揮させていただく機会に恵まれませんでしたが、今回初めてその機会を与えていただきました。
感謝の言葉しかありません。
今までの人生経験によって蓄積したあらゆるものと、自分の五感を駆使して、この曲に浸りたいと思います。
個展演奏会で定期的にご一緒させていただく皆さんや、また今回初めてお会いする方々との“和”を大切に、今回も音楽する喜びを皆さんと共有したいと願っております。
髙草木典喜

コンサートマスター:小野智明
 5回目の静一展が開催される。今回は2回目の「失なわれた都」含む4曲。鈴木先生の曲は学生時代からさんざん弾いてきたが、人魚と維新は初めてという楽しみなプログラムとなった。
 「失なわれた都」は大学2年に初めて弾き、次は先生が亡くなられた4年の追悼演奏会、3回目はコムラード40回記念定期、そして今回で4回目となる。何度弾いても、弾きながらこの壮大なドラマに引き込まれてしまい自分が物語の一部になったような錯覚に陥る。演奏者は伝達役として冷静でいなくてはならないと思いつつ、気がつくと曲と一体化してしまっている。先生がこのドラマに込めた思いの深さ、強さがそうさせるのか? しかしこの曲や「皇女和宮」のような史実に基づく曲に限らず、「人魚」「スペイン」も、先生が曲に込めた感情に同化した、奏者の心の高まりが聴衆の心に伝播していくのではないかと想像する。
 「スペイン第3組曲」は第1組曲、第2組曲にはない、スペインへの先生の内省、純粋な創造が色濃く表現されているように思う。それはスペイン三部作の締め括りとして弾く側、聴く側の想像力により強く迫ってくるのではないか?
 鈴木静一作品は、自分が好むマンドリン音楽という枠組みを越えて、音楽の素晴らしさを純粋に与えてくれる特別な存在である。

マンドロンチェロパートトップ:高橋信男
第二回から参加をしているマンドチェロの高橋です。
2020年のプログラムは特に思い入れの深い曲が並びました。
真夏の都府楼を訪問した折、残された礎石に巨大建造物を想像していると、どこからともなく「都」のLargo(廃墟に立つ)が聞こえてきました。
コルドバに建つメスキータ寺院(礼拝の間)の幻想的なうす暗いひんやりとした空間に立つとき、「スペイン第三」の第二楽章夜想曲冒頭のグロッケンシュピールの連打に乗って流れるムーア風の旋律がまるでBGMのように流れてきました。
鈴木先生の曲は情景や色彩や空気がそのまま響きに連なる親しみやすい音楽なのでしょう。
過去に演奏をした曲でも、書き込みのない真っ新な譜面で全国から集まる仲間と都合8回のリハーサルでは集中したいとワクワクしています。二年に一度集まるこの静一展は、今では私にとっては特別な演奏会となりました。

コントラバスパートトップ:村里眞美
「古きを温ねて新しきを知る」とは言いますが
静一作品についても、正にその通りかと思います。

大規模な編成が多い故に近年は演奏される機会が
限られている中、改めて静一作品に触れることで
音楽の素晴らしさや、一種の日本人らしさというものを
再発見できるような気がします。

静一展も、今回で5回目の開催となります。
皆様とのご縁に感謝しつつ、
今回はどんな”一期一会の演奏会”になるのか楽しみです。
鈴木静一氏が作り上げた壮大な世界に、存分に浸りましょう!!